AさんBさんコンビと、CさんDさんコンビの二組が挑戦します。
なにを用意すればいいでしょうか? じゃがいもと人参と豚肉と玉ねぎ。 だしは鰹節。あと、醤油と砂糖とお酒。 どこに売っていますか? 野菜も肉も商店街で買えます。 どの店にありますか? 野菜は田中さんの店で、肉は鈴木さんの店 醤油と砂糖とお酒は? 棚の中にあります。 | なにを用意すればいいでしょうか? じゃがいもと人参と豚肉と玉ねぎ。 だしは鰹節。あと、醤油と砂糖とお酒。 じゃがいもの代わりにトマトを入れたいのですが。 それは『肉じゃが』じゃないからダメです。 わかりました。 風味付けにとかげの黒焼きとかどうでしょう? そういうのもいいかも・・・しれませんね。 肉屋が3時からタイムセールなので 安いのを買ってきます。 |
豚肉を一口大に、人参は乱切り。 はい 玉ねぎはくし型切り、じゃがいもは皮をむいて 8つぐらいに切ってください。 銀杏切り?くし型切り? 手本を見せてあげます。 はい。 | 豚肉を一口大に、人参は乱切り。 玉ねぎはくし型切り、じゃがいもは皮をむいて 8つぐらいに切ってください。 私はじゃがいもの皮も好きなので、 皮つきでいいでしょうか? 私は嫌いなので取ってください。 |
お湯を沸騰させて、鰹節でだしを取ります。 鰹節は一掴みぐらいです。 一掴みってどれぐらいでしょうか? これぐらいです。 はい。 で、再度沸騰したら取り出す。 え、もう沸騰していますよ? | お湯を沸騰させて、鰹節でだしを取ってください。 煮干しのだしもとっていいですか? どうぞ構いません。 |
人参、じゃがいも、玉ねぎを炒め、 火が回ったら、だしとお酒を加えてください。 はい。 3分ぐらいでやめてください。 はい。 <3分後> もう少し炒めた方がよさそうですね。 はい。 | 人参、じゃがいも、玉ねぎを炒め、 火が回ったら、だしとお酒を加えてください。 こんなもんでいいですか? もう少し炒めた方がいいですね。 いや、こんなもんがいいのです。 あっそう。 |
豚肉と砂糖を加え、強火で炒め、 あくが出てきたら取ってください。 はい。 大さじ一杯。 はい。 | 豚肉と砂糖を加え、強火で炒め、 あくが出てきたら取ってください。 血圧が高いので砂糖控えめで。 どうぞ。 |
醤油を加え、中火で煮込んでください。 はい。 野菜に火が回ったら出来上がり。 はい。 | 醤油を加え、中火で煮込んでください。 野菜に火が回ったら出来上がり。 とかげー。 やっぱりいれるの? |
まあまあの出来ですね。 はい。 明日もう一回作りましょう。 はい。 | 意外ととかげがいい仕事していますね。 砂糖が少なすぎましたね。 明日もう一回作りましょう。 いいですね。明日はどんな味になるか楽しみです。 |
レシピの通りに作ってうまくいったAさんBさんと、
レシピ通りじゃない分、少し違うものになったCさんDさん。
<仕事のインプットとアウトプット>
『肉じゃがを作りましょう』と漠然と言われても、
うまい肉じゃがやまずい肉じゃが、いろいろあります。
いろいろありそうですが、この範囲に収まっているものを
肉じゃがと呼ぶことにしましょう。
うまい肉じゃがやまずい肉じゃが、いろいろあります。
いろいろありそうですが、この範囲に収まっているものを
肉じゃがと呼ぶことにしましょう。
仕事には許容範囲があります。
いくら肉じゃがに似ていても、
一定のおいしさ以下のものは肉じゃがとは認めません。
いくら肉じゃがに似ていても、
一定のおいしさ以下のものは肉じゃがとは認めません。
仕事にはアウトプット(結果)があります。
甘い肉じゃが、辛い肉じゃが、何でもいいですが、
アウトプットは許容範囲以上でなければなりません。
甘い肉じゃが、辛い肉じゃが、何でもいいですが、
アウトプットは許容範囲以上でなければなりません。
どれだけおいしくでも、肉じゃがの範囲を 突き抜けていれば反則ですし、 | いくら肉じゃがだったからと言って、 あまりにまずいのも考え物です。 |
アウトプットは、目の前にある『肉じゃが』の完成をもって、
その他のすべての可能性は閉ざされ、一意に確定します。
その他のすべての可能性は閉ざされ、一意に確定します。
<再検証 肉じゃが講座>
(1) インプット
肉じゃがを作りましょう。 | |
仕事はインプットとともに始まります。 この時点では、ありとあらゆる肉じゃがを作れる可能性があります。 | |
(2) インプットの絞り込み なにを用意すればいいの? じゃがいもと人参と豚肉と玉ねぎ。 だしは鰹節。 あと、醤油と砂糖とお酒。 豚肉を一口大に、人参は乱切り。 玉ねぎはくし型切り、じゃがいもは皮をむいて 8つぐらいに切ってください。 | |
想像の中ではいろいろな肉じゃがができますが、 実際に作れるのは一種類だけです。 A~Dさんが行う仕事の大半は、可能性の絞り込みです。 | |
(3) インプットの追加 風味付けにごま油とか鷹の爪とかどうでしょう? じゃがいもの代わりにトマトを入れていいですか? それは『肉じゃが』じゃないからダメです。 肉はタイムセールで安いのを買ってきます。 じゃがいもは皮つきのままでいいでしょうか? 煮干しのだしもとっていいですか? 血圧が高いので砂糖控えめで。 | |
インプットは途中から追加することもできます。 Dさんは、Cさんの絞り込みに対して、自分好みとなるよう提案を加えます。 Cさんは、その中から許容範囲を超えるものを却下します。 出来上がるのが『肉じゃが』であることに変わりはありません。 しかし、Cさんの言うとおりにしていれば実現しえなかった肉じゃがへと変化していくことになります。 | |
(4) 劣化 もう沸騰していますよ。 | |
残念ながら、人はミスをします。 始める前は、『理想の肉じゃが』ができる可能性もありますが、 実際に作業を進める中で、さまざまなミスを重ね、そのたびに理想から遠ざかっていきます。 ミスは必ずしも明示的なものだけではありません。 ― もしかしたら昆布だしの方がよかったかもしれない。 ― もしかしたらアルミ鍋より土鍋の方が良かったかもしれない。 ― もしかしたら火力が今の1.22倍で沸騰時間が5.243秒だったら 最高の風味が出たかもしれない。 ― もしかしたら・・・ ミスの繰り返しで、現実的で平凡な肉じゃがに落ち着いていきます。 | |
(5) アウトプット 料理は完成しました。 | |
アウトプットが一つに確定したところで仕事はおしまい。 肉じゃがは完成です。 |